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【カッピングメモ】ラ・エスメラルダ農園プライベートオークション

東京では真夏のあっつ~い日が続いてますが、西日本では大雨。
被害が大きくなっているようです。西日本にお住まいの方はお気を付けください。

お店がある仙川は、今週は外を歩く人が減るレベルの暑さになっていまして、いろいろな作業が捗っています。
この勢いに乗って残っていた最後のカッピングメモである「パナマ ラ・エスメラルダ農園」のプライベートオークションを書いていきたいと思います。

パナマのラ・エスメラルダ農園と言えば、ゲイシャという品種を世界に広めたスペシャルティコーヒー業界では知らない人はいないのではないかと思うくらいの有名農園です。

ゲイシャは今はパナマだけでなく、他の国にまで栽培されるようになって、グアテマラ、コスタリカ、コロンビア辺りのゲイシャをよく聞くようになりましたし、他の国も今後出てくるだろうと思われます。

さて、まずは今回のカッピングについて感想を書いておきたいと思います。
これまでの各国COEは気になったロットについて寸評を書いてきましたし、グアテマラのエル・インヘルト農園のプライベートオークションについては、ロット毎の違いを書きましたが、今回は早いです。

感想はただ一言。コメントに値するロットはありませんでした。

僕が初めてこの農園のコーヒーに触れたのは6年程前になります。
まだこのお店を開く前で、自宅にディスカバリーという小型焙煎機を置いて自分で焙煎をしている頃でした。
何だか一通り触りたいコーヒーは触ったかな?と思っていたところで目に入って来た「パナマ ラ・エスメラルダ農園 ゲイシャ」の文字。
価格はもちろん他のコーヒーと比べると4~5倍。普段なら高過ぎて買うことすら考えないような価格です。
でも、今後お店を出すことを思うと、こういったコーヒーも触れておいた方が経験になるだろうと思い、度胸付けだと思ってえいや!と1kg買ったのです。

今から思えば、ちゃんと焙煎できていたのかよく分かりませんが、覚えているのはとにかく素晴らしくフローラルな香りと長い余韻。甘みも強くてエレガント。部屋の中がその香りでいっぱいになるだけでなく、飲み終わった後の口の中にいつまでもその香りが続きました。
そのインパクトは強烈で、一生残る記憶になりましたし、「これがあのゲイシャか。それは有名になる訳だ」と理解できました。

焙煎度合はハイとシティの境目くらいで、今の傾向からしたら深いのでしょうが、僕は今でもその焙煎度合のゲイシャが好きですし、ゲイシャは香りが命でしょうと思うようになったのは、この経験があったからだと思います。

ということがあったので、僕にとってのゲイシャは、感動できなければゲイシャではないのです。
率直に言って、今回のラ・エスメラルダ農園のゲイシャは何一つ感動しませんでした。
香りもない。酸味も大して感じない。これのどこがゲイシャなの?というコーヒーでした。

僕はこの6年間、毎年ラ・エスメラルダ農園のゲイシャをカッピングしてきました。
当店の2年目までのカッピングまでは、最初の頃と変わらない香りの強さと感動があったと思います。
3年目から「あれ?今年は全体に弱いかな?でもまあこのロットとこのロットはOK」という感じでした。

その次の年からもうダメです。
たまにうっすら~っと香りがあって、がんばって嗅がないと分からないレベル。
以前のこの農園には味の濃さもありましたが、年々弱くなってきています。
「前はやんちゃで勢いがあったけど、最近は穏やかで上品な感じにシフトしてきてる」と言えば響きは良いですが、そういう問題ではありません。
そもそもゲイシャに求めるべきはそんなことではなく、ゲイシャにしか出せない風味でなければいけないのです。

以前感じたようなゲイシャがなくなってしまった訳ではありません。
昨年秋、SCAJというスペシャルティコーヒーの展示会が東京ビックサイトで開催された時に、パナマのブースでズラッといろいろな農園のゲイシャが並びました。
ブースの前で試飲をしていましたが、その間見ていても一番人気はラ・エスメラルダ農園のようでしたが、どう考えても他の農園のゲイシャの方が美味しかったし、中には久しぶりに感動できるレベルのゲイシャもありました。

僕はゲイシャが変わってしまったのではなく、農園が変わってしまったのではないかと考えています。
もちろん、問題は1つではありません。ゲイシャという品種は木の寿命というか、ピークが非常に短いのだそうです。植えてから4~5年が品質的にはピークで、8年目くらいから落ちるという話も聞いたことがあります。
それがあてはまっていて、植え替えをしていないのだとしたら、ラ・エスメラルダ農園のゲイシャは既にピークを過ぎた木ばかりということになるので、後から植えた他の農園の方が味が優れているというのは合点がいきます。

また、サンプルのコンディションが必ずしも毎年同じとは限らないということです。
収穫して、精製してから実際のコーヒー豆は2ヶ月ほど倉庫で休ませてから出荷するわけですが、サンプルはそれよりも短い状態で届くこともあります。
ただ、この農園のオークションロットはロットの名前で収穫月が分かるようになっていて、それは変わっていないので、そこは関係ないかもしれません。
違う考え方をすれば、生豆も変化して行きますから、生豆としてピークを迎えるのが最近はもっと先になっていて、このサンプルをカッピングする頃は全く味が出なくなったという想像をすることもできます。これは、当店では入荷したことがないので、調べられません。

経営方針という部分もあるのではないかと思います。
今年のプライベートオークションで1つ変化があったのは、また新たなエリアが追加されたということです。
この新しいエリアは元々からある「ハラミージョ」というエリアから200mほど標高が高い場所にあって、個人的にはこちらの方が酸の質が良かったように感じました。
ただ、管理しきれれば良いのですが、「広げる」というのは何事にも時として質の低下を招きます。この辺りは非常に一人で勝手に懸念しています。

と、訪れた農園ではないので想像の域を出ないのが歯がゆいですが、近年のラ・エスメラルダ農園の質には懐疑的ですと言わざるを得ません。

ゲイシャという品種に焦点を当てると、先ほども書きましたが、他の産地からも出てくるようになりました。
パナマで人気が出て、素晴らしい風味なので試したくなるのは必然です。

ただやはり、こちらはこちらで注意しなければなりません。
栽培環境の影響はかなり大きい品種のようで、パナマ産と同じような衝撃を受けるゲイシャには、まず出会うことはできません。
これまでで、唯一同じレベルの衝撃を受けたのは、「グアテマラ エル・インヘルト農園」のゲイシャです。でも、これも確かゲイシャをオークションに出して1年目か2年目の頃で、その時が一番よかったと思います。

ですが、それ以外では「このゲイシャはパナマ並みの衝撃だ!」と思うものはなかなかありません。求める味はやはりパナマの農園のものが多く、個人的にはゲイシャは結局パナマが一番環境的に合うのではないかと思っています。

という訳で、今回はカッピングの感想というよりは現在のラ・エスメラルダ農園とゲイシャの状況に関して物申す的な感じになりました。
でも、毎年このカッピングをする度に思うことで、一度まとめておきたいと思ったので書いておきました。
もはやカッピングメモというよりは店主のクドバナにカウントしたいくらいですね。

最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
今シーズンのカッピングメモはこれで一旦終了です。
夏に入ると日本に到着した各国ロットのカッピングがあったりするので、それについてひょっこり書くかもしれません。
今後もこちらのブログには言いたいことを書き連ねていくと思いますので、お付き合い頂ければと思います。

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