みなさん、こんにちは。カフェカホンの平村です。
台風21号がようやく過ぎ去ったと思った直後に北海道での地震。
今年の日本の夏は、いろんな意味で厳しいことになっています。
まずは被害に遭われた方の、できるだけ早い復旧をお祈りしています。
さて、もうすっかり忘れ去られていたシリーズ「店主のクドバナ」ですが、久しぶりに書いてみたいと思います。
調べてみたら、昨年秋に浅煎りの焙煎に挑戦した時のことを書いて以来ということで、随分久しぶりになってしまいました。
今年に入ってからはコーヒーサークルを始めたりしたので、そちらの報告を書いたり、cafendというネット媒体に月1でコラムを書いたりしている関係でなかなかクドバナを更新できない状況でした。
ちなみに、cafendでは僕なりにライトな層向けの内容で書いていますので、よかったらご覧ください。
カフェのような生活の拠点となる情報を発信するライフスタイルマガジンcafend
今日はそんなことを書くために始めたのではなく、題名にもあるように初めての焙煎機を触ってきたので、感想などを備忘録がてら書き残しておきたいと思います。
触ったのは、ナナハン焙煎機
今回お邪魔したお店は、西調布にある「pantry coffee」さんです。
こちらではワイルドコーヒーさんの「ナナハン焙煎機」という焙煎機を使用しています。
こんな焙煎機です。
最大投入量が750gなので「ナナハン」って言うんだろうなと思っています。
こちらのオーナーさんに以前、焙煎の相談をされまして、僕も触ってみたいと思っていた焙煎機でしたので、今回お邪魔させて頂きました。
まず、当店のギーセンと違うところは直火式ということ。ギーセンは半熱風です。
ちなみに、ナナハン焙煎機も注文時に直火と半熱風と選べるようです。
僕は直火式の焙煎機の経験がほとんどなく、半熱風との違いがどのように出るかが楽しみでした。
あとは実際に焙煎機を見てみると、バーナーとドラムの距離が思っていた以上に遠かったです。
焙煎機の構造には昔から「遠火の強火」という考え方があって、これは主に直火式についての考え方だと思うのですが、これは正にその考え方が含まれていると感じました。
それと、排気に関してはダンパーが付いていることはもちろん、排気ファンの速度も手元で簡単に調整できるようになっていて、ここは海外の焙煎機にも見習って欲しいところですね。
どんな焙煎をしてきたの?
全部で5バッチ、全部違う豆を焙煎してきました。
内容とともに、記録がてら焙煎豆の断面を載せておきます。
非常に接写に向いていない環境で撮っていますので、ブレまくってますが参考までに。
①オーナーさんのアドバイスの元、ナナハン焙煎機の様子を探りながら。
使用豆:グアテマラ レタナ農園
②1回目を参考にして、排気環境をギーセンに近くして再挑戦。
使用豆:グアテマラ ドン・アントニオ農園
③2回で大分感じを掴めたので、自分なりにプロファイルをアレンジ。
使用豆:エチオピア イルガチェフェ ウェギダ・ブルー
④3回目よりも排気ファンの速度を下げて、自分流のプロファイルで。
使用豆:ニカラグア エル・リモンシージョ農園 パカマラ(ナチュラル)
⑤4回目とほとんど同じ感じで、マンデリンをフレンチローストで。
使用豆:インドネシア クラシックブルボン
使ってみてどんな感じだったのか?
直火式の焙煎機はほとんど経験がないということで、どんな動きになるかいろいろ想定していたのですが、基本的には使用感はそんなに違いはありません。
道中の豆の色の変化も変わらないですし、基本的なものは何も変わりませんでした。
強いて言えば、やはりガス圧などを変えた時のリアクションが半熱風よりも早く、やりたいことがすぐできるという所はやはり感じましたね。
それ以外に、ナナハン焙煎機に限って言うことでは、ガス圧、ダンパー、排気ファンの速度と調整できることが多いので、いろいろなプロファイルを試せると思います。
特に①の方法は豆全体を「カリッ」と煎るのを狙いとする焙煎でしたし、②以降は僕が普段から慣れている環境に寄せて焙煎したので、火の入り方もちょっと違うとは思います。
焙煎し終わってからすぐに全ての豆をかじってみましたが、①はそれこそカリッと良い音がしましたし、②以降はいつも焙煎しているコーヒー豆と同じような感じがしました。表面はカリッとしていますが、中心の方は①に比べて弾力がある感じです。
焙煎機そのものは、とても良くできていて、小型の焙煎機を探している方にとってはやはり視野に入ってくるものですし、能力も十分だと思います。
ただ、焙煎機そのものの熱の保持力はそんなに優れていないように感じました。
その辺りはフジローヤルのディスカバリーと似ています。
味に違いはあったの?
味については、正直な所もっと置いておかないとしっかりしたことは言えないと思います。
今日も少し飲みましたが、まだまだこれから味が出てくるという雰囲気がしています。
ただ、これまで飲んだところで言えることは、
・輪郭がはっきりしていてピントが合っている感じ。とてもクリーンに仕上がる。
・豆の個性も澱みなくしっかりと出る。分かりやすい。
・イメージしていたよりも、焦げる感じはない。
・フルシティに近い辺りからチョコレート感が強く出る。
と言ったところです。
ピントが合ってクリーンな感じやチョコレートの強さは、普段のギーセンで焙煎する豆よりもしっかり出ていると思います。
ただ、これが直火式のおかげなのか排気量の調整ができるおかげなのかは判断できません。
チョコレート感は直火式の影響かな?と想像しますが、ピントを合わせる方は排気量の調整でできそうな気もします。
個性の強さは、このピントがしっかり合っている焙煎が出来ているので、自然と出てくるのでしょう。
どのくらいまでそれぞれの味がしっかり出るのかは、もう少し寝かせてから様子を見たいと思います。
ナナハン焙煎機を使ってみての総評
という訳で、焙煎に興味のある方にしか全く連いて来れていない内容になっていますが、最後にナナハン焙煎機を使った後に感じていることを書いておきたいと思います。
僕は前から、「コーヒー豆を正しく焙煎する」ということを心がけておけば、どの焙煎機でもほとんどやることは同じと思っていましたが、今回直火式の焙煎機を触ってみて、やっぱりそうだったかなと感じました。
大事なのは「どういう状態にコーヒー豆を焙煎したいのか」という中身の問題であって、そこがしっかりしていれば焙煎機の違いとかコーヒー豆の違いとかは調整してあげれば良いのだろうと思っています。
もちろん、焙煎機が変われば外的要因が変わるので、同じように焙煎をすれば中身が変わりますから、出来上がってくるものも変わってきます。
でも、反対に環境をいつも通りに近づけてやれば、同じような焙煎をすれば失敗はしないようです。
ただ、直火式と半熱風では、得意としている守備範囲は違うようです。
同じように焙煎をしても、よりクリーンになったりチョコレート感が強く出るのは、焙煎機の違いのように思います。
でも先ほども書きましたが、それが焙煎機の形態の違いのせいなのか、排気量の調整ができるせいなのかはもっと試してみて検証が必要でしょう。
なので今現在の僕の結論は、「どの焙煎機でも95点くらいまでは同じように作れる。ただ、それ以上は焙煎機の守備範囲が合っていないと踏み込めない」という感じでしょうか。
大概のことはプロファイルで解決できると思います。
ただ、プロファイルを超えた世界もやっぱりあって、そこに踏み込みたい時は、その踏み込みたい方向性と焙煎機の特性を合わせる必要があると考えます。
自分が持っていないものは羨ましくなってしまうもので、直火式が出せる味も良いものだなあと感じましたし、こうして新しい環境を体験してしまうと、開けなければいけない扉がまだまだたくさんあるなと実感します。
なかなか現実はついてこないですが、こういった自分で感じたことをもっと集めて、より洗練されたカフェカホンのコーヒーを表現していきたいと思います。